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2022.2.25

お酒の「あらばしり」「中取り」「せめ」とは? 【渡辺酒造店】

~聞いたことはあるけど実はあまり知らない、日本酒用語の解説 【渡辺酒造店】~

 

季節を問わず楽しめる日本酒には、さまざまな種類がありますが、その中で汲み取る部分によって呼び名が変わるのを、
皆さんはご存じですか?

今回は、なかなか知られていない呼び名や違いについて、解説いたします。

槽場でお酒をすくっている様子

 

 

日本酒造りで重要な工程「搾り」

日本酒は、お米と米麹と水を原料に発酵させ、濾したものです。
発酵中のどろどろな液体をもろみといい、それを圧搾して採取した液体がお酒で、残った固形物が酒粕になります。
この工程を「搾り」または「上槽(じょうそう)」と呼び、この工程には大きく分けて3通りの方法があります。

 

①自動圧搾機を用いる方法

現在、最も主流なのが自動圧搾機を利用する方法です。
自動圧搾機は大きなアコーディオンのような形状で、布を貼った板を何枚も重ね、その中にもろみを押し通すことで搾ります。
自動圧搾機で搾ると酒と酒粕がきれいに分離できるうえに、短時間で済むので、酒が空気に触れる時間を短縮することができます。
しかしながら、搾る圧力が強いため、デリケートで精米歩合の高いお酒で用いられることは少ないようです。

自動圧搾機 圧搾機内部の様子 圧搾機のパネルについた酒かす

 

②槽搾り(ふねしぼり)

袋しぼりともいます。槽の中にもろみの入った袋を入れ、上から圧力をかけて搾る伝統的な方法です。
歴史的にも一番古くから用いられていて、このもろみを搾る道具が舟の底に似ていることから、槽しぼりと呼ばれるようになったと言われています。
丁寧に圧力をかけて優しく搾るため、手間ひまはかかりますが、雑味の出ない日本酒本来の味わいを楽しめます。

柿渋染めの木綿袋にもろみを入れている様子  柿渋染めの木綿袋  

 

③しずく搾り

もろみの入った袋を吊り下げて、上から圧力を加えることなく自然に酒を分離させる方法です。
自然の重力のみなので、とてもアナログな方法ですが、お酒の必要な成分だけが抽出されるので、
日本酒の香りや味は、クリアで繊細なものに仕上がり、口当たりも優しくなります。

滴り落ちる部分をゆっくりと集める方法なので、全てを搾り出すまでにとても時間がかかるのが特徴です。

袋吊りのもろみ

 

 

「あらばしり」「中取り」「せめ」

日本酒には、仕上がったもろみを搾る際の、出てくる順番で名前が付けられています。
最初に出てくるあらばしりとは、搾ったときに一番最初に出てくるお酒の部分のことを言います。
あらばしり
の後、中間部分に出てくるところを「中取り(中汲み・中垂れ)」、
さらにそのあと最後に出て
くる部分を「せめ(押し切り)」といいます。
これらの部分は、正確な量が定められているわけではないので、各酒蔵の裁量でここまでがあらばしりで、それ以降は中取りというふうに
決めることができます。

「せめ」以外には明確な定義はありませんが、目安としては袋の目が詰まって滓が見えなくなるまでが境目とされています。

しぼったばかりのお酒

 

 

各部分の味わい

 

1.「あらばしり」


最初に出てくる部分である「あらばしり」は出始めから白く濁り部分が入っている区間で、澄み始めたら中取り(中汲み)とされます。

漢字で書くと「荒走り」と表記するように、醗酵ガスが含まれているため微炭酸で、切れ味鋭い荒々しい味わいと華やかな香り、
フレッシュ感のある風味を楽しむことができます。
しかし、その炭酸ガスは液中において不安定なため、搾布などに付着して徐々に液から放出されていきます。

ちなみに、新米で仕込み、その年の一番初めのお酒を「荒走り」とも呼ぶそうで、おそらく酒の目詰まりがなく、滓が多いからだそうです。

 

2.「中取り」


あらばしりの後に少しずつ圧力を加えられたことで搾られる「中取り」は透明で、最も綺麗な
酒質です。
味と香りのバランスが優れており、落ち着いたまろやかな味わいが特徴です。

一般的にお酒の一番いい部分とされ、日本酒の品評会にもこの部分のみを汲み取ったお酒が出品されることが多いです。

 

3.「せめ」

搾りの最終盤、もろみに含まれる液体量が少なくなってから強い圧力を加えて搾られた「せめ」は、
力が加わっている分、複雑な味わいになるといわれています。
しかしその
一方で、成分が凝縮されて、力強く濃厚なお酒になるのが特徴です。

 

 

渡辺酒造店では、特定の部分のお酒を汲み取って商品化しているお酒が1つありますので、ご紹介いたします。

 

【 蓬莱 手詰め中汲み純米 無濾過生原酒 】

毎年3月中旬に行われる、当蔵最大のイベント『蓬莱 蔵まつり』で特別に振る舞う、ご来場者還元酒です。
コロナの影響により、蔵まつりが開催されない年にも、毎年待ちわびてくださる皆様のために、引き続き商品化しています。

「なか」とは、品評会に出される一番おいしい部分です。また「なか」だけを汲み取ることは、非常に手間のかかる作業のため、
本来は大吟醸などの超高級なお酒だけでしか使用されません。
しかし、蔵まつりにいらっしゃるお客様に「おいしい部分だけを飲んで頂きたい!」 そんな蔵元の想いから、
敢えて「なか」だけを取り出し、無ろ過生原酒のまま手詰めしました。

1年にたった1度しか手に入らない、行列のできる原酒を是非味わってみてください!

手詰め中汲み純米1.8L 手詰め中汲み純米720ml

酒質:無濾過純米生原酒(要冷蔵)

精米歩合:飛騨ほまれ 55%

アルコール度数:17度

日本酒度:-3

販売時期:3月中旬~4月上旬限定、詳しい日程はお問い合わせください。

 

まとめ

あらばしり、中汲み、せめについて理解していただけましたでしょうか。
搾るタイミングによって違いが出たり、味わいの変わる日本酒は非常に興味深く、さまざまな一面を見つけることができます。
酒蔵によってはそれぞれの部分を瓶詰めして、商品にしているものもあります。
人によって好みや感じ方は変わってくるので、様々な銘柄や精米歩合をたくさん飲み比べて、自分好みのお酒の味わいを
見つけてみてくださいね。

 

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