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ブログ 蔵談義

チーフ 熊崎 貴光

2021.1.21

今回は酒造りの現場ではなく︑お客様に近い位置で仕事をされている流通事業部チーフの熊崎さんにインタビュー。蔵人の方とは少し違った視点のお話を聞く事ができました。

Q:まず渡辺酒造店に入社した、いきさつを教えて頂けますか?
熊崎:高校卒業後、JAのガソリンスタンドに勤めて9年目27歳の時︑現社長さんから夕食に誘われ、その時お話頂いたのが最初です。面識はありましたが、突然の夕食の誘いだったので、何の話だろう?と、とても身構えた記憶があります。
お話を聞くと、近々先代の番頭さんが定年で引退される。次代の渡辺酒造店を作るための社員を探しており、その一人目として一緒にやってくれないかというお誘いでした。迷いはありましたがその時の仕事に限界を感じていたこともあり、3ヶ月後には入社をしました。

Q:熊崎さんの現在の業務内容を教えて下さい。
熊崎:主となる業務は、飛騨地区以外の酒販店さんや問屋さんからの受注および出荷の手配です。事務所に居ますので、DMのお客様の電話対応、店頭のお客様への対応もさせて頂いています。

Q:入社からずっと総務系のお仕事をされてきたのですか?
熊崎:今年で41歳、入社して14年目になりますが、最初の2年間は瓶洗い、ラベル貼り、瓶詰め、出荷と最終作業の現場をしていました。しかし3年目を迎えた頃つまり年程前、出荷量が次第に増え始め事務が追いつかないという事で、少しずつ受注や出荷の手配を手伝い始め、現在に至っています。

Q:約10年前というと、DMなどで飛騨地域外へのアプローチが始まった、まさに新しい渡辺酒造店が産声を上げる頃を現場で体験してみえたのですね。その時の社内の雰囲気はどうだったのですか?
熊崎:この転換期を語る上で外せないのが『蔵元の隠し酒』です。これには心底ビックリさせられました!確かあの当時、千五百本の限定発売だったと記憶していますが、これがあっという間に完売したんです。もちろん、これほどまで売れるお酒があるのか!と完売した事自体に驚いたのですが、それ以上に驚いた事は、社内の生産体制、社内の意識がガラッと変わった事でした。それまでは昨年実績に照らし合わせて生産も出荷も販売も段取り通り、計画通り。コツコツ堅実に。といったものだったのですが、「まだ無いのか」「いつ届くのか」と多くのお電話を頂くようになり、自分たちの段取り、やりやすい生産計画ではなく、どうしたらお客様の期待に応えられるのかを第一に考えなくてはいけないという考え方に変化していきました。
あとこれは私の固定観念だったのですが、日本酒は地酒といわれる様に、一部のプレミアム酒を除いては生産されている各地域内で消費されるもので、他地域で受入れられるのことはないと勝手に思い込んでいました。しかし蔵元の隠し酒をはじめとする当蔵のお酒がどんどん飛騨地域以外で受入れられていくにつれて、自分の考えの古さを反省するとともに会社の方針は間違っていないと私自身、自信が芽生え始めた時期でもありました。

Q:『超吟しずく』が即完売してしまった時もありましたね。
熊崎:『超吟しずく』がiTQiの首席を取り、新聞の社会面に取り上げられた日の事ですね。その日ちょうど病院に行く事があって午前中休みをもらっていたんですが、10時を過ぎた頃から「早く来てくれ。」「何時に出社できる?」と会社から何度も電話。何事かと駆けつけると、超吟しずくを求めるお客様からやまない電話そして殺気立つ事務所。はじめの内は受注処理でよかったのですが、完売後はお断りとお詫び。それからの2〜3日は、電話が鳴る度にビクビクしていました。とは言え、この出来事も私たちの商品への自信を深める出来事となりました。

Q:飛騨地域外への出荷手配を担われて約10年、出荷傾向に変化はありましたか?
熊崎:東海地方を筆頭に関西・関東方面への出荷が多いという地域別の傾向はあまり変化がありませんね。ただ、10年前には取引のなかった県でも現在では少しずつ販売店が増えてきています。全国各地の酒販店さんや問屋さんで渡辺酒造店のお酒が販売されている姿は10年前には想像していませんでした。本当にありがたいことです。

Q:お仕事をされる中でうれしいこと、大変な事を教えて下さい。
熊崎:受注・出荷手配を担うものとして、お客様のご希望通りのお日にちに確かな商品をお届けできる事が一番の喜びです。ただ出荷のピークの時はお客様のご希望に添えない事が多々ありご迷惑をお掛けしてしまっているのが実情です。

Q:流通事業部ということで難しいかも知れませんが、熊崎さんとして夢は何ですか?
熊崎:受注・出荷というポジションの為、お酒づくりに直接携わる事はありませんが、「日本の山といえば富士山」ではありませんが、「飛騨の酒といえば蓬莱」と誰もが言ってくださる様にその一翼を担いたいと考えています。

Q:最後に熊崎さんのお好きな渡辺酒造店のお酒を教えてください。
熊崎:ガツン系ではなくフルーティーで味わい深いお酒が好きなので、吟醸生酒や愛山が好きです。あと日常で飲むのなら蓬莱上撰を常温で飲むのが好きです。常温だと、蓬莱ならではの深い味わいが口の中にふわっとそしてゆっくりと広がり心身ともに落ち着く事ができます。

聞き手/村坂壽紀
熊崎さんは現社長が専務時代に自分自身で選考して採用した社員さん一号。やさしい人柄とコミュニケーション能力の高さそして何より蓬莱、会社そして渡辺酒造店のファンの皆様を思う気持ちが伝わってきました。熊崎さん自身は酒造りに直接関わる立場ではありませんが、フロントでのこういった方の努力や対応が蓬莱本来の美味しさを更に引き立てているのではないかと思わせていただくインタビューとなりました。

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