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ブログ 蔵談義

蔵人コディー 「飛騨のブルース・ウィルス」の巻

2021.1.3

〜酒づくりはダイ・ハード〜 聞き手/村坂寿紀

Q:来日して8年とお聞きしました。飛騨の生活はいかがですか?

A:私はアメリカのユタ州出身で州内の大学を卒業した後、ユタ州やサンホセ州でスポーツトレーナーや医学療法士の仕事をしていました。そして2004年、大学時代に知り合った飛騨高山出身の妻との結婚をきっかけに飛騨に移り住みました。

初めて飛騨に来たときは、自然に囲まれていて美しく生活しやすそうな町だな、と思いました。実際に住んでみても趣味の自転車ツーリングにもとってもいい環境で、すぐに好きになりました。ただ最初の冬で雪の量にビックリ。朝に雪よけしても、夕方になると朝よりも雪が積もっている もうアメイジングでした。

Q:仕込みシーズンを迎えて、蔵が活気づいていますが、お仕事の方はどうですか?

A:今酒屋用語でいう釜屋を担当しています。米を洗ったり、蒸(む)したりする仕事です。仕込みシーズンになると毎日早朝4時の起床です。お米は、外側は硬く内側は柔らかい蒸し米に仕上げる事がポイントなのですが、米1つ1つの種類の違いそしてその日の気象条件に合わせて蒸気の調節をしなければならないのが難しい所であり、酒造りの奥深さを感じる所です。

Q:スポーツトレーナーから酒蔵への転職となった訳ですが、どのような経緯で渡辺酒造店を選ばれたのですか?

A:来日して仕事を探している時、タウン誌の求人広告欄を見た妻から「どう?」と声をかけられました。勧められたすぐには、不安で一杯でしたが、次第に「トライ!やってみよう」という気持ちに傾きました。ただ正直に言うと日本酒の知識がグラウンドゼロだったため、グッドもバッドも判断する材料がなかったのが真実です。実は日本酒が米からできているという事すらもその時には知らなかったのです。

Q:生活環境が変わるだけでなく、伝統や格式を重んじる日本酒の酒蔵への転職…ご苦労もあったのでは?

A:仕事においては大変な部分もありますが、苦労と思ったことはありません。蔵の仕事は、丁寧な説明より見て覚える、効率的な教え方より繰り返して体に覚えさせる、という純日本的な古い伝承方法なのですが、先入観や固定観念がなかった私にとっては全てが「こんなものかな…、これがここのルールなんだ」と抵抗なく受け入れる事ができました。ただ言葉の壁はありました。妻が日本人なので、ある程度日本語に関しては自信があったのですがいざ酒蔵の現場に入るとあまり聞いた事がない言葉やイントネーションで理解ができない…非常にショックを受けました。でもその言葉の殆どは東北弁という特有の日本語であり、専務さんでも時々を教えてもらうのはしばらく経った後でした。

冗談みたいな話ですが、頭が「んだ、んだ」と言われるのを「ダウン、ダウン(下、下)」と思い、何度も足もとを見たことがありました。

Q:渡辺酒造店で8年、思い出に残っている事はなんですか?

A:面接の初日ですね。その日は妻の運転で来社し、妻も同席して面接を受ける事になっていましたが、当日の朝、急に妻が行けなくなり、一人で面接に行くことになったのです。車を運転しながら、不安がどんどん増してきて、考えれば考えるほど頭が真っ白になっていったのを覚えています。そして会社に着き、専務さんと社長さんそして通訳の方との4人で話をさせてもらいましたが、引き続き頭が真っ白で何をしゃべったのか記憶にありません。数十分の話のあと、杜氏さんを紹介してもらいました。杜氏さんは酒造りのボスだということで緊張が更にピークに達していましたが、私を見た杜氏さんのほうが「えっ外国の方!?」といわんばかりに目を丸くして驚かれた時、私もやっと少し笑顔がこぼれたと記憶しています。

 

Q:最近はサンフランシスコの日本酒イベント「SAKE-DAY」に参加されたり、世界ソムリエコンクールで海外のソムリエに日本酒をPRしたり、海外の方に渡辺酒造店をPRする機会が増えていますね。

A:海外での日本酒の認知や評価はまだまだ低いんですね。残念ながら私もそうだったように「日本酒は米と水でできている」という事すらあまり知られていないのです。でも米と水でなんでこんなに奥深い味になるんだ!と驚いたり、日本酒を再評価してくださるお客様の笑顔を見る時、この仕事をしていてよかった!と心から喜びを感じます。これからも日本酒のおいしさや良さをもっともっと広めることで、笑顔を世界に広げられたらいいと思います。

Q:コディーさんご自身は、プライベートでもお酒は召し上がるんですか?

A:飲みますね。来日前はビールやウィスキー。実は日本酒を飲んだ事はありませんでした。来日して渡辺酒造店に入ってからは日本酒のおいしさを知ったのと、勉強のためにも日本酒を飲む様になりました。当初は飲みやすさもあり、冷やを飲んでいましたが、次第に日本酒の虜になり、今ではもっぱら燗酒を飲んでいます。

Q:今後の目標はありますか?

A:外向きの目標としては、国内外問わず、日本酒の良さをもっともっと広げたいと思います。個人的な目標は、自分の手で「生酛山廃大吟醸」を作ることです。

Q:最後に、数ある渡辺酒造店の商品の中で、コディーさんの一番のお気に入りを教えて下さい。

A:色おとこです。お米で作り上げたフルーティーさがたまりません。

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